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風雅、舞い - 第七章 告白 (1)
「おじゃまします」
 俊雄と恭子が居間に入ってきた人物を見る。が、それがリシュネだということに気付くまでに数秒を要した。
「……どうしたの? 驚くと思ったのに」
 魂の抜けた顔をリシュネに向けることなく、恭子が答える。
「えっと……舞と朴さんならいないよ?」
「え??」
 あまり表情を見せないリシュネが目を丸くした。
「どうして?」
「ふたりとも朱き泉に行ったんだと思う、そう置き手紙があったから」
「朱き、泉」
 今いる碧き泉が水を司るように、炎を司る朱き泉も存在する。そしてそれは、雅樹の故郷を意味している。
「場所教えて」
「知ってたらここにいないよ……」
 俊雄がだらしなく答えた。
 そのだらしなさから逃げるようにリシュネは2歩で家の外へと出て天高く跳び上がる。眼下を見回すが、濃霧と森林が覆う岩ばかりの山々をその頭上から見下ろしてもふたりを見つけることは不可能だった。
 生体反応を見つける術……があったとことは思い出しても、その術そのものは身に着けていなかった。
 強い風がリシュネをもてあそぶ。舌打ちして空を跳ね、家の前へと降りる。
 今度は数十歩掛けてゆっくりと居間へ戻ると、美咲が顔を上げた。
「あら……!?」
 美咲の顔が険しくなり、瞬時に身構える。
「……初めまして」
「え……?」
 それに対して深々と頭を下げたリシュネに、美咲はきょとんとした。
「ええと、こちらはリシュネさん。朴さんが倒れたときに、舞と一緒に看病してくれてた方です」
「……あなた、人間じゃない……わよね」
 APや怪物の話を断片的に聞いていた美咲はそれでもまだ目の前のリシュネが発する雰囲気に警戒心を解いてはいなかったが、後ろの2人の態度と、リシュネの瞳の色に少しずつ自分を落ち着かせようとしていた。
「リシュネ、この方は結白美咲さんって言って、舞のお母さん」
「あ……」
「?」
「あの2人……朱き泉、どこにあるか知っていたら教えてください」
 リシュネの興味は、舞と雅樹に向けられたままだった。
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