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風雅、舞い - 第十章 剣と魔法 (1)
「だから、向いてねぇっての」
「それ聞き飽きたってゆーの!!」
 刀と剣が切り結ぶ。閃くのは閃光、ではなく水飛沫。舞が持つ水の剣は、形を変えつつも雅樹の刀を押し止める。
 壁の外、林の中で二人は鍔迫り合いをする。刃引きした刀を持つ雅樹の表情には余裕があり、水の剣を両手で押さえつける舞は必死の形相を見せている。
 力負けして舞が跳び退く。
「む」
 雅樹はそこに踏み込み刀を振ってみせるが、そのさらに1メートル先まで舞は後退していた。
 さらに雅樹は踏み込む。身長も体重もある雅樹だが、脚力には自信があった。舞に肉薄する。
 が、次のステップで舞はさらに後退し、木の影へ回り込む。木々が乱立し、足場も岩や泥で不安定、にも関わらずこの素早さ。
「おまえ、背中に目があるのか? それとも俺みたいに背後霊でもいんのかよ」
「ここは湿気が多いから、感じ取れるのよ、周囲を」
 雅樹の側面に回り込み、突く。が、雅樹は余裕で躱す。
「!ッ」
 あからさまに悔しそうな顔をするが、雅樹はそれを見てため息をついた。
「あのなぁ」
「な、なによ」
「だから」
 雅樹が踏み込む。隙など見せていない。むしろ「来る」と警戒していた。なのに。水の剣が振り遅れる。雅樹はそれを躱して、今度こそ必殺の距離に立った。刀が、喉元に来る。
「向いてないっつーの」
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