KAB-studio > 風雅、舞い > 第十一章 AP (1)
風雅、舞い - 第十一章 AP (1)
 碧き泉を包むように生い茂る森の中。
 俊雄と恭子は編んだ縄を木にくくりつけ、読むことはできないが意味はわかる護符を結びつける。
「終わった?」
「うん、次行こ」
 ふたりは隣の木へと移り、ふたりがいた木へ舞の母、美咲が来る。護符がちゃんと着けられているか確認してから、触れ、念じる。見た目には変わらないが、美咲はその結果を視てから、次の木へと移る。
「終わりましたー!」
 道なりになった斜面から恭子が手を振る。泉を囲むように巡らされた結界は、ただひとつの道でひとつに綴じようとしていた。
「ふたりともご苦労様」
「いえ、居候させてもらっているんですから」
 ふたりは当然という顔をした。
「でも、この護符ってこの前のと違いますよね」
 恭子は護符を手に取る。以前のものより強力なことがなんとなくわかる。
「違うのよ、前のが切れちゃっただけ」
「え”」
 今では入手困難な護符は無駄遣いできないが、泉を包むように張り巡らし、そのうえ風雨で長い間もたないとあって、消費量は激しかった。
「話じゃ結構できるっていうし、ここを捨てるわけにもいかないし、かといって攻めてくる気配もないし、こっちから攻め入るだけの準備もないし」
「物騒なこと言いますね……」
「今回の護符は強力だし対物障壁もあるから剥がれにくいはずよ。そのぶん……私も含めてむやみに出入りはできなくなるけど」
「前みたいに私達だけ出入り自由、っていうわけじゃないんですか?」
「そう。今回は無差別だから。そういえば舞がもうすぐ帰ってくるのよね、言っておかないと」
「もうおそーい」
 森の中から、ひりひりした手を振って舞が出てきた。
 検索