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風雅、舞い - 第十二章 超越する存在 (1)
 9月半ばのある日。
 白い半球のドーム。
「ちっ」
 舌打ちは舞のもの。リシュネへと向けて4つの水槍が放たれる。
 リシュネはその水槽を素手ではたく。その度に手が形を崩していくが、同時に水槍は方向を違え爆散する。
 リシュネが駆ける。
 0.5秒。
 5メートルの距離が埋まる。残り、5メートル。
「壁!!」
 舞の声と同時に二人の間に水の壁が造り出され
「遅い」
 その壁をリシュネは体当たりで貫通する。
「なんちゃって」
「!!」
 砕けた水が水流となりリシュネを包む。それはネットのようにリシュネを阻み、粘りあるものとして絡み取る。
 50センチ。
 舞の目の前で動きが止まる。苦虫を噛み潰したようなリシュネの表情、対照的な舞の笑み。
「こ、こんなのに……」
「表面張力とかも活用してるから簡単には無理だって」
 ブザーが鳴り、同時に水が解ける。
「これ、初めてだよね」
「個人練習の時にちょっとね」
「他にもそういうの……あるの?」
「さてねー」
 という舞の笑みに、悪気はない。
 でも。
「そうなんだ……」
 リシュネの顔は沈む。
「交代だぞ、舞」
 上から、雅樹と少年が降りてくる。
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