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Machician - 第1話 空から王子が降ってきた (1)
「あーっ、もう!!」
 髪の茶色い少女は柵から身を乗り出して、心配そうに眼下を見る。木々が生い茂る急な斜面に、足を怪我した子犬がうずくまっている。
うめ、ちょっと落ち着きなさい! あ、すみません、こっちの話で、そう、そうです!」
 黒髪の少女は携帯の相手を熱心に説得していた。
紫恋、まだ!!?」
「だから落ち着けって言ってんだろ!! あ、こっちの話で」
 髪の茶色い方、うめは子犬と紫恋を交互に見る。あからさまに苛ついていることがわかる。
「あ、はい、それはそうなんですけど……いえ、多分それは大丈夫なんです、むしろこのバカが」
 髪の黒い方、紫恋が心配そうにうめを見る。うめは子犬を見ている。
 子犬の足が滑る。
「行く!!」
「あ”!!」
 紫恋の目の前でうめは柵を跳び越え斜面を滑り降りる。制服が汚れるのもスカートがめくれるのも構わず土煙を上げて、うめから見たら真っ逆さまとも思える角度を降りていく。
「あんたがのろのろしてるからうめ落ちちゃった!!」
 わざとすごくはしょって携帯を切り、脇にある石段を紫恋も駆け下りる。100段以上あるその階段は、一番下の道路まで見ればこれも真っ逆さまに落ちる気分で、登下校で毎日上り下りする紫恋でもうめのようには降りられない。
うめうめ!」
 階段からは10メートル近く離れた場所、子犬の側へうめは滑り降り、木に手を掛けて減速する。
「! 痛そ……」
「別にこんなのどうってことないわよ。ほら、ゴン太」
 うめが手を差しのばすと、ゴン太は素直に抱きかかえられた。
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