KAB-studio > Machician > 第7話 灰色の鬼、白き翼 (1)
Machician - 第7話 灰色の鬼、白き翼 (1)
 旅館山田屋のダイニングテーブルを挟むように、うめシーバリウが座っている。
 テーブルに広げられた教科書と問題集。
「夏休みの宿題、しません?」
 いつもは「8月31日にやる派」のうめも、シーバリウに言われれば「イベントのひとつ」としてむしろ大歓迎だった。
「……」
「……」
 でも、会話はない。
 シーバリウは黙々と問題を解いている。問題集に視線を固定し、ただひたすら手を動かしている。
 対して、うめも手は動かしているものの、ちらちらとシーバリウを見て、気にしていた。
「ねぇ、王子
「はい、何かわからないところがありましたか?」
 ばっと顔を上げるシーバリウに、うめが少し距離を取る。
「あ、えーっと、そういうわけじゃないんだけど……」
「そうでしたか……それでは勉強を続けますね」
 と、再び問題集へと向かい、鉛筆を走らせる。
「……」
 なーんか変なんだよなー。
 ……ううん、考え過ぎかも。
 本当に変、という確証はないし、なんとなくだし。
「ねぇ、王子
「はい」
紫恋のこと、何か知らない?」
「え……」
 シーバリウが顔を上げる。
「いえ……夏祭りの後、会っていませんから……」
「そう……」
 夏祭りが終わり、一週間。ちょうどお盆の真っ最中。
 その間、紫恋が電話に出てくれない。
 実家が地元の待逢家は、お盆と言ってもどこかへ行くことはない。家に行けば、高士神主はいる。でも、紫恋に会うことはできなかった。
「麦茶持ってくる」
 うめが立ち上がり、台所へと行く。
 それをシーバリウは上目遣いに見て、溜息をつく。
 ……何をしているのでしょうか、僕は……。
 検索