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Machician - 第12話 たったひとつの確かな理由 (1)
「……ここは……?」
 紫恋は、上を見上げる。
 赤い石の天井。
 周りを見ても、赤い石のみ。
 そこは、赤い石で構成された、迷路だった。通路の幅は2、3メートル。壁を構成する石は立方体形状、隙間なく敷き詰められた石の表面には、幾何学図形を組み合わせた文様が彫り込まれている。照明の類は見あたらず、壁面そのものが赤く輝き周囲を照らし出していた。
「ここは137番、クネリ界です」
『ここが……』
 ジャージシーバリウが周りを見回す。周囲には赤い石しか存在しない。「世界」とは思えない、閉じた空間。
「何その、何番とかって」
「異世界の番号です。僕のいた彼の地を含めて、創主様は無数の世界を創られたそうです。魔法学ではそれぞれの世界に名前がつけられているのですが、皆さんの世界では名前ではなく番号が振られているんです」
「お詳しいんですね」
 その声の主は、緑色の布に包まれた女性。
『イヴァンディ、だっけ』
「はい、そうお呼びください」
『ここに連れてきてくれた、ってことはHACの業務を遂行してくれる、っていう認識でいい?』
「はい、JCTHUの方々があのていたらくでしたし、HACは体面よりも結果を重視しますから、こういう場合にはちょっと出しゃばってお助けした方がいいんです」
『それは感謝するわ。じゃあまず』
 ジャージは周りを見回す。
『この世界について簡単に説明して』
「はい。クネリ界は魔族第三伯爵であるフーディン様がお作りになられた世界です」
「フーディン!?」
 驚くシーバリウに、イヴァンディは見えない眉をつり上げる。
「魔……族?」
「魔族というのは、魔法によって創られた人工生物のことです。多くは人に似た姿を持っていて、高い知性と体力、そして魔力を兼ね備えています。ですが、生殖能力のないものがほとんどですし、製造できるのは高位の魔術師に限られますので、僕の知る限り、現存する魔族は一握りだと聞いています」
「仕方ないでしょ? 制約によって生殺与奪を奪われた魔族は戦争の道具として使い捨てられましたから。ね、シーバリウコメネケ王子殿」
「……まさか……君も」
 イヴァンディの白い瞳が、シーバリウを睨み付けた。
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