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Machician - 第1話 空から王子が降ってきた (3)
「ちょっと、う」
 ビビーッ! という警告音。地面に光る赤い『接近警戒線』が激しく明滅している。
「……めのお父さん、本当に大丈夫なんですか?」
『大丈夫、比較的成功率の高い魔法を使うから』
 スピーカーから大人と子供の中間のような女性の声が聞こえる。
「……ジャージ、本当に大丈夫なんでしょうね」
『大丈夫、ちゃんと成功してるから』
「そう? ならいいんだけど……」
『シミュレーションで』
「シミュレーション!?」
『しかも脳内』

 一歩踏み込むと再び警告音。
「……うない……って!」
『はいはい下がって下がって、始めるから」
 大きな音を立てて装甲多脚の6本の足が地面を噛む。
 狭いコクピットの中。モニターに『固定完了』と表示される。
さん、 test06 フォルダの 211012.mdl ってファイル開いて」
ジャージ、そんなのないぞ。 210112.mdl ってのならあるけど」
「それでいいや」
「あいよ」
 がスライド式ポインティングデバイスでファイルを選びダブルクリックする間に、の後ろ上方、ガナーシートに座る、あずきジャージを来たジャージは両腕を筒の中に差し込む。あやとりのような太い紐がジャージの腕に絡みつく。
「たぶたぶたぶ、……くりっく、くりっく……くりっく、じゅうに」
 ジャージの両目を覆い隠す、海女が使う水中眼鏡のような、巨大な遮光型ヘッドマウントディスプレイによる視線入力と音声認識を使って、設定を変更する。
「設定完了、魔法実行シークェンス短縮版を開始します」
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