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Machician - 第4話 機械の魔法、機械の天使 (30)
「……結構時間掛かりますね」
 更衣室に入ってから5分、子供の方が先に出てくる。
ワースは普通の服じゃないから……異次元空間に密閉するって話もあるし」
「なにそれ?」
 紫恋は信じていない。
「もちろん信じられないけど、HACが作ったものだし、魔法使ってるし、文献の中にもそう記述されているのが結構あって、信憑性もそれなりにあるのよね……」
「魔法、ね……」
 目の前に魔法使いがいても、そういう話は簡単には信じられなかった。
 お父さんが出てくるまで、子供のワース姫山巡査がチェックする。その姿は、まさに宇宙服の確認のようだった。
 それから3分ほどしてからお父さんが出てきて、同じようにチェックを受ける。
 そして、子供達とうめとその他大勢の羨望の眼差しの中、セラフへと向かう。
「この上の席に座ってください。乗ったら、お子さんを膝に乗せるようにしてくださいね」
 パイロットシートの上にあるガナーシートへはしごを使って上り、最初にお父さんがシートへと座り、その上に子供が乗る。
林田巡査、お父さんとお子さんが乗りました』
『二人ですね、わかりました』
 林田巡査の操作でパイロットシートとガナーシートがコクピットへと格納され、ハッチが閉じ装甲板が降りる。
ワース起こします、皆さん離れてください』
 接近警戒線が地面を照らし、ワースが立ち上がっていく。その間に林田巡査がガナーシートへと接続する。
「お二人とも初めまして。私はこのセラフを操縦する奥多摩署の林田といいます。これからの30分間、よろしくお願い致します」
 右手のパネルに点るボタンを押していき、視界上に二人の表情が映し出される。
「このように、お互いのお顔は見えますから」
『パパ!?』
 その子供の声音は、異常なものだった。
 そして、お父さんの顔を見て、林田巡査は凍り付いた。
「……おとう……さん?」
「ああ、そうだ。まずは……そうだな、あの装甲多脚を踏みつぶしてくれないか?」
 笑みを浮かべ、林田賢一が、しわがれた声で、息子にそう、命令した。


 つづく。
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